ファッション史

1890年代ヴィクトリア朝ドレス:歴史に忠実なドレスメイキングと細長シルエットの秘密

1890年代ヴィクトリア朝ドレスの歴史に忠実なドレスメイキング

一枚の絵を、
絵の中に入り込むように眺める時間があります。

解説ではなく、
描かれた時代の中で、
いったん立ち止まる時間。

一枚の絵を、40分かけて見る

1890年代のヴィクトリア朝ドレスは、

ダイエットで身体を細くするのでなく、

視覚を操作して細く見せる造りでした。

 

袖山の角度。

前身頃の縦ライン。

偽ヒップの構造。

 

1890〜92年ってほんのちょっとのに流行した

細長シルエットの仕組みを分解するよ!

本物のヴィクトリア朝ドレスを作るには?

コスプレ用の衣装と本物のヴィクトリア朝ドレスはちがいます。

 

ステキなコスプレ衣装を作るなら、

自分が「ステキだな~♡」と思う

コスプレイヤーさんの衣装を参考にすればいいのです。

 

でも「時代の服」を作るなら、

時代の構造を見る必要があります。

 

当時の人がどう見えたかったか。

どんな身体に見せたかったか。

 

そこを読み解かないと、

その時代のドレスになりません。

本物を作るために必要なたった2つのこと

歴史衣装を成立させる要素は、驚くほどシンプル。

  1. 徹底した時代考証
  2. 時代の空気を持つ身体の理解

①は資料の密度。

②はシルエットの理解。

この2つが揃うと、

ドレスは“再現”ではなく“復元”になります。

衣装デザイナーの時代考証のやり方

実際の時代考証の方法‥

ネット検索だけでは足りません。

 

必要なのは、当時の絵画・写真・日常記録を

何度も照合すること。

 

  • 同時代の画集を見る
  • 写真資料を見る
  • 日常の姿勢や立ち方を観察する
  • 数年単位で時代を限定する

今回は1890〜92年。

 

この数年にだけ現れた

特殊なシルエットを再現します。

 

ドレスだけでなく、

  • 袖の角度
  • 襟の高さ
  • 下着構造
  • 髪型
  • 姿勢

全部が一体で、時代の身体を作ってるところを理解。

 

 

 

 

 

イタリア映画「家族にサルーテ!」giornale delle dame ファッションプレート 最新の袖モデル  1890年

↑↑↑袖の資料!

イタリア映画「家族にサルーテ!」ジャケット 1890年

 

イタリア映画「家族にサルーテ!コケランとマルグリット・モレノと執事 1890年 プリモリ

ドレス全体はもちろんエリ、袖、アクセサリー、ヘアスタイル、下着、レース、立ち振る舞い・・

とにかくしつこくオタク的に資料探しをします。

プリモリさんと言うイタリアの1890年頃大活躍した写真家の作品はファッションデザイナー必須の資料です。

記念撮影ではない日常を切り取った写真から、当時の人々の本当の生活を知ることが出来ます。

写真はすべてパブリックドメインですので、安心して使わせてもらえます^^

イタリア映画「家族にサルーテ!女性の日常 1890年-95年 プリモリ

 

そしてやっと!デザイン画を描きます。

イタリア映画「家族にサルーテ!1890年 日常ドレス デザイン画 アオキ

 

 イタリア映画「家族にサルーテ!」1890年 散歩用ドレス デザイン画 アオキ

1890年-92年だけに流行ったドレスラインがあります。

1862年に女性のドレスは最大級に大きくなりましたよね?

あれからイロイロありましたが、この1890年にほっそり時代を迎えます。

 

それで細長シルエットにするために、ダイエット?

ぶぶー、ちがいます!

 

視覚効果をねらうんです!

  • 鳥のクチバシのようにうえにとんがった袖山
  • 幅のせまいスカート
  • 前身頃の真ん中に別生地をいれて縦長ラインを強調
  • ウェストからスソにドレープ
  • スタンドカラー
  • ドレスと袖の色を変える

など、あの手この手で細く見せようとしていました^^

このワザ、現代でも使えますよ!

ヴィクトリア朝ドレスを実際に作る工程とは?

今回はグローブ座のパターンナーを呼んできました。

彼がヴィクトリア朝ドレスの当時の作り方にとても詳しいからです。

 

デザイナーは衣装完成ゴールを決めて、パターンナーや縫製師の作業を正しい方向に向ける仕事をします。

そしてドレスは複数人で縫うので、お針子さんチームを作ります。

  • 鳥のクチバシのようにうえにとんがった袖山↑

そして縦にずらりと並んだボタンも縦長ラインを強調してくれます。

ここでは黒真珠母貝。

ドレスの余り生地でボタンをくるんでしまう、「くるみボタン」というのもよく使われる技法。

一つづつ手作業で作ります。

  • 幅のせまいスカート↑

1862年頃の特大スカートと対照的ですよね?

  • 前身頃の真ん中に別生地をいれて縦長ラインを強調↑

するために別生地を入れます^^

ここでは真ん中のライン入りの生地。

  • ウェストからスソにドレープ↑

スカート部分の横と後ろに縦にドレープ。

前にはちょっと横方向にドレープ。

 

  • スタンドカラー

 

このデザインではドレスと袖は同じ生地です。

全然違う生地にしても縦長ラインは強調されます!

 

おまけ、これがホントの1890年アンダースカート!

1890年はヒップ上部にボリュームを出すスタイル。

筋トレいないで偽ヒップで十分。

どうせまたすぐ流行の体形は変わりますから^^

偽ヒップ部分に横方向にボーンを入れて膨らませます。

私はもちろん、着て座ってみました!!

偽ヒップは座るときに折りたたまれるのでちゃんと座れます。

そして腰のあたりがなんとなく固いものに囲まれるので、勝手に姿勢が正しくなります。

まとめ

ヴィクトリア朝ドレスをはじめ時代コスチュームを作るのに一番重要なのは

  • 時代考証
  • モデル選定

と言うお話でした^^

 

絵が描かれた時代に行く、というより、
そこに立っている人の身体の感覚を想像する。

解説を聞くより、
一枚の絵の前で、
少しだけ時間を置いてみる。

見え方は、
ゆっくり変わっていきます。

 一枚の絵を、40分かけて見る

服の歴史を「知る」より、
一緒に見てみたい方へ。

 

 

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