映画関係の仕事に就きたいYさんから受けた質問です。
「アメリカへ留学はしたほうがいい?」
彼女は映画監督志望。
メイクアップアーティスト
衣装デザイナー
プロデューサー・・
イギリスへ、フランスへ、オーストラリアへ・・よくある質問です。
答えは、しないほうがいいです。
映画を仕事にしたい人が留学しないほうがいい理由
第一の大きな理由は、
留学しただけでは働けないからです。
留学は学生ビザで簡単にその国に滞在することができます。
でも働くのには就労ビザが必須で、
就労ビザの取得は世界的に年々とても困難になってきています。
特に映画の場合、どんな小さな仕事でも契約書を作成するので
就労ビザを必ず提示する必要があります。
学校を卒業しても働けなかったら、その国に滞在すらできません。
日本であてもないまま無職で帰国・・になってしまいます。
残るのは留学経験のある人、という肩書のみ。
第2の理由は、
留学先の言語のネイティブスピーカーであることが絶対条件です。
でないと語学習得で数年無駄にしてしまいます。
映画製作の学校は実技が主です。
映画は複数人で作るもの。
自分だけが言葉がわからなくて遅れてしまっては製作に参加できません。
映画監督やライターはシナリオをその国の言語で書かないといけません。
作品が作れなくて、目的の学校に入学すらできないかもしれません。
ただしあなたがネイティブスピーカーであるなら話は別です!
留学が無駄になったり挫折してしまうケースも・・
留学したほうがいい場合は、どうしても海外の特定の教授に学びたい場合。
どうしてもあの学校でしか学べないことがある、という場合もです。
重要なのは必ず留学の前にその国で就労ビザを取れるのか必ず調べること。
もしその国で就労ビザの取得が困難であれば、
卒業したらさっさと日本に帰国する道を残しておくべきです。
その後どうするかも検討を付けておくのがベストです。
幸運がやってきてスカウトされて就労ビザを取ってくれる・・
というのは映画業界の場合ほぼありません。
例えばイタリアでは映画はフリーランスの働き手が数か月、
映画製作会社などと契約するという形です。
契約したはいいけれど、
就労ビザ取得のためには一度日本に帰国する必要があります。
その際日本でかなり待機期間が出ます。
もし製作に間に合わなかったら・・?
もしうまくいって就労ビザが出ても、
映画製作がおわったらビザが切れてしまいます・・
また一からやり直しです。
衣装工房などに就職はどうでしょうか?
残念ながらこれで工房のほうでは就労ビザ取得まで動いてはくれません。
就労ビザを取得させるのにはとてもお金がかかるので、
たいていビザの要らない現地人優先です。
これらの事情は国によって変わります。
一方日本の企業や旅行会社の海外支店に就職すると就労ビザは取れますが、
職種が変わります・・
たとえイタリア人と結婚しても数年待たないと永久就労ビザは取得できません。
家庭に入ってしまって留学は挫折‥というのがよくあるパターン。
これで映画業界ではたらくために留学するという目的は果たせますか?
私の場合留学先でたまたま映画製作に出会いました。
その時すでにネイティブスピーカー。
自慢ではなく、そうでないとついていけなかったからです。
シナリオがわからなかったら映画実験センターにも合格できません。
イタリアで映画関係の仕事に就こうとして留学したのではありません。
卒業後、幸運なことに永久就労ビザを取得できましたが。
日本で働きたいのなら絶対日本で学校に行くべき
一方日本で働く日本人なら面倒なビザは要りません。
上記のような理由から、
現実的に冒険をおかさず、絶対確実に映画業界で働きたいのなら、
日本で学校に行くべきです。
それも名刺代わりになるくらいネームバリューのある学校に。
即戦力があるという信用を在学中に作ってしまうのです。
私が日本で映画を作るなら日本の社会を知っている日本人に頼むと思います。
街で生地を買ったり、日本の慣習をちょっと確認したり、
日本人ほうがスムーズにいきそうだからです。
外国映画で働きたいから留学する・・
ではその後働けないので、残念ながらあまり理由にならないかもしれません。
海外で映画関係の留学を成功させる道はあるのか?
おススメの方法その1は、
日本で映画衣装デザイナーなどになってから
イタリア政府奨学金など外国政府公認の奨学金を取ってから
イタリアや海外へ留学することです。
これなら奨学金が出るし、なんといっても帰国後の地位が保証されています。
無職で帰国‥ということだけは絶対に避けるべきです。
それに入学試験は日本での審査のみです。
万が一審査に通らなければ、次の年に挑戦することもできます。
おススメの方法その2は、
お金があればですが私費留学することもできます。
日本での仕事を一時期休んで、という形ですね。
イタリアで知り合ったファッションデザイナーの方がそうでした。
日本の23区などでファッションデザイナーとして経験を積んでから、
一旦その会社を辞めて、3か月間ミラノに短期留学していました。
帰国後は別の会社でファッションデザイナーとしての仕事が決まっていたそうです。
このように映画・ファッション業界で働くということは
つぶしの効かない専門職なので先のことまで考えておいたほうがいいです。
日本で学ぶ決心をされたら、
ぜひ海外留学しなくてもここで学べる
ファッション史交流サイトをのぞいてみてくださいね!