ローマの老舗ティレッリ衣装工房に映画『山猫』の衣装が広げてあるという情報が!
フィルムの4k修復版がやっと完了。
その記念展覧会のため保管庫から引っ張り出してきたということ。
目次
ヴィスコンティ監督の映画『山猫』
この映画は1963年の伊仏合作作品。
バート・ランカスター
クラウディア・カルディナーレ
アラン・ドロン‥
ラストの舞踏会シーンで出演しているのは本物の貴族たちという話で有名。
本物を見るなんてもう2度とないかもしれないチャンス!
何とか潜入に成功!
ティレッリ衣装工房はヴァチカンの近くの住宅街にあります。
衣装デザインは私の恩師、ピエロ・トージ氏。
彼との出会いはイタリア国立映画実験センター。
アカデミー衣装賞は『クレオパトラ』(1963年 アメリカ)と
争って負けてしまったというハイレベルさ。
クラウディア・カルディナーレのドレスがきつくて入らなかったら、ある人に見られて仰天・・
↑この映画のもっとも有名なクラウディア・カルディナーレの白いドレス。
シチリアに残っていた1862年の本物の貴族のドレスをモデルにして制作。
さあ、現在保存されている映画の衣装はこちら!↓
全体のラインに1860~62年の流行がよく表れてるよ!
- 限りなく下がったなで肩
- 極細ウェスト
- 細く長い首
- 胴の長さがすごく短い
- 史上最高に大きいスカート
袖の付け根にフリルでボリュームを出すことでさらに細いウェストを強調。
視覚効果ですね。
こちらはドレスの生地のアップ↓
もう手に入れることのできない本物の繊細なシルク。
ドレスの全体像↓
肩を切る?
絶食?
体型補正下着をつけるのです!!
私は比べてみるべくそのまま体型補正下着なしでこの白いドレスを試着してみました。
クラウディア・カルディナーレって、太くはなさそだけど細くもなさそう。
どちらかというとグラマー。
ツイギーとちがって小枝のように細い!というイメージはないよね?
と、考えているとじ~っと視線が‥
振り向くと製作者ご本人、ピエロ・トージ氏‥!
ため息ひとつ‥
無言でコルセットを手渡されました‥
コルセットに頼ってお肉が柔らか~~~だった女性たち
ちなみに私は日本の洋服でMかLサイズのごく普通体型(のつもり)です。
クラウディア・カルディナーレの下着 デッサンbyアオキナオカ
1862年頃の下着
- シュミーズ
- コルセット
- クリノリン
- クリノリンの大きさを調節するヒモ
- スカートを広げるためのフリル
- 靴下止め
からなっています。
①まずはコルセットの下に綿シャツを着ます。
シュミーズって呼ばれます。
ここでは短い胴衣の下に着るシュミーズのこと。
シュミーズの襟ぐりは大きい。
袖と襟ぐりの裾には必ずフリルが。
これはドレスの滑りをよくするため。
それと肌にドレスが直について垢が付かないように。
肌からちょっと浮くようになってたんです。
当時はこれをすでにこのシュミーズを何枚か着ましたが、私は1枚。
②シュミーズの上にコルセットをつけま~す。
まず前の部分は装着前に金具で留めておきます。
次に後ろの斜めの通してあるヒモを引っ張ってウェストを閉める!
後ろの開きがまた20センチ以上あります・・
ではおとなしくピエロ・トージ氏の指導に従いましょう。
1862年のコルセットの付け方でもう一度。
ストップ!息を止めたまま!
そのすきにメイドがコルセットをはめます。
お手伝いさんが私の背骨に足をかけて2人がかりでぐいぐい引っ張る!
すると背中の開きが5センチくらいに!?
『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラ。
「もっときつく!」とメイドにコルセットを締めさせていましたね?
もうここで結んで!
早く!
はい、コルセット装着したよ。
そしていざ、息を吐こうとしても吐けない‥
肺に空気が入って胃が小さくなったままで固定なのです!!
助けて目の前が白くなってくる・・
本当にほんっとうにコルセットをはめて気絶した女性の気分がわかりました。
これでダンスですか?
もってのほか!
真夏、どうするんでしょうね?
実はこの昔の女性たち、ほぼ筋肉がなかったというか。
ずっと固いコルセットを付けていたためにコルセットに寄りかかってしまっていたんですね。
なので筋力のない、やわらか~いお肉で出来ていたんです。
それで上記のように息を吸って締め上げると‥
クラウディア・カルディナーレや
ブリジット・バルドーの衣装担当デザイナーが
「彼女たちのお肉は柔らかかった・・」と言っていました。
いいから早くコルセット外して!
早くもギブアップ!!ドレスは着られなくてもいい‥
ココシャネル女史が好き
1862年の大流行は巨大なクリノリン!
1840年ごろからふくらんだスカートが流行りだす。
初めはたくさんの大きなフリルを重ねてふくらみを出してました。
今もフリル重ねパニエって売ってるでしょ?
あんな感じ。
クリノリンとはスカートを膨らませる鳥かごみたいな装置。
クリ―ノつまり馬の毛から作られてたんだよ。
ジェーン・カンピオン監督の映画『ピアノレッスン』の冒頭部分。
船が難破して浜に打ち上げられた母娘。
お母さんがクリノリンにアンダースカートをかぶせて娘の即席テントにしてあげたよね?
ところでこのクリノリンはスカートの下に着けてスカートをふくらませ、
④のように中でヒモを締めたり緩めたりして
スカートの大きさを調節してました。
これはクリノリンを上から見た図です。
誰も描いたことがないので超貴重!
とにかく④のひもでスカートのデザインに合わせて
③のクリノリンの大きさを調節できたということです。
⑤のスカートを広げるための裾のフリルは必須。
これがないとスカートの裾が内側に入ってきて、自分の靴でスカートの裾を踏んじゃう!
逆さにしたお椀の中に入っている女子!みたいな‥
ってことにホントになってました!!
見たかった~~
⑥の下の靴下止めは本当は膝の上で留めるんですが、
間違えて膝下に描きました。
これじゃ、靴下さがっちゃうよ。
でも描き直すとクリノリンが消えちゃうのでこのままアップしちゃいます。
ゴメンね!
ティレッリでホンモノ見ながら描いてきたので鉛筆ですよ。
巨大なクリノリン、どうやって着けたの?
答えは、まず広い家に引っ越します。
というのはウソですが、家具を替えたりして
とにかくクリノリン女性が通れるような家にします。
そしてメイドがクリノリンを買いに行きます↑↑↑
そしてお嬢様に着けます↑↑↑
クリノリンデカすぎてこれでもう誰も近づけません。
近づけないから‥
超笑えるんですが、ドレスを棒であやつって着せるんですよ!?
あんたホントに高貴なお方?
ちなみにちゃんと座れるようどんどん改良されました^^↑↑↑
ひざにあたる部分にはボーンがないので座っても痛くない。
アラン・ドロンのネクタイはきつくなくて心底ほっとした
当日は1960年代の超イケメン代表、アラン・ドロン着用のネクタイも。
私もちょっと締めてみました↓
こちらはきつくなくて息も吸えて、心底ほっとしました。
これは本当に『山猫』の中でアラン・ドロンが着けたんだよ!
まとめ
イタリア映画の金字塔、ヴィスコンティ監督の『山猫』の衣装を実際に試着して描いてみたお話でした~。
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1860年代のクリノリンも解説しちゃったよ!