超レア映画衣装写真が手に入ったのでシェア。
イタリアのカンケ―ないしと絶対禁制の某衣装工房に侵入成功!
展覧会の準備に行ったからだよ^^
パオロ・ビルジ監督の映画「Nーナポレオンと私」(2006年伊仏)の衣装を触って、裏側まで写真に撮っちゃった^^
衣装デザイナーはイタリアのマウリツィオ・ミッレノッティ。
メル・ギブソン監督の「パッション」、
トルナトーレ監督の「海の上のピアニスト」などなどの衣装担当。
この映画でダビッド・ドナテッロ賞に輝いています!!
そういえばナポレオンって最後にエルバ島に島流しになっちゃうんですよね。
その時の直筆手記がエルバ島出身の人の家にあって。
日本にも貸し出されていったそうです。
そのエルバ島出身の人って言うのは、私のアカデミア時代の教授でした^^
1789年フランス革命とともに王侯貴族中心のロココ時代はおわりを告げます・・
次は自由な人体賛美の風潮が流行ります。
理想モデルはギリシャ風!!
まずは超面白い時代の過渡期を見てみましょう。
目次
フランス革命前夜のファッションはこれだ!!1780~90年
1780年のシルエットはヘアスタイルはふくらんでいて、背が高く、スカートの後ろにボリュームがあったスタイル。
フランス革命目前・・
マリー・アントワネットが国庫を使いまくり贅沢し放題だったころ・・
彼女はそれまで自分がトップを切ってやっていた、豪華で人工的な、ファッションの流行に、ふと疑問を持っちゃうんだよね~
それでファッションリーダーが思いついたのは牧歌的な田舎の暮らし。
プチ・トリアノン、めんどり、乳搾り、親友・・
それを実現させるために農民の服を摸したりしてね!
もちろんシルクと金銀糸、ダイヤとレースの農婦風ドレスだよ!
その10年間でヘアスタイルはデカくなったりナチュラルになったり忙しい。
とにかくネオクラシック時代到来の準備期間!
クラシックつまり古典=ギリシャ
ネオつまり回帰。
ギリシャ古典への回帰ってこと。
もう髪粉を振って真っ白にすることはありません。
オシロイ真っ白もダサい!自然にね!
ドレスはスカートの後ろにボリュームがあっただけ。
ヒップの後ろにボリュームがあるスタイルって、ファッション史の中でも1885年のバッスルが流行った頃と2回だけ。
流行はもちろん均整の取れたギリシャ・ローマ建築。
だってほら、ギリシャ古典への回帰ね!
ポンペイ遺跡が発見されて、薄物衣服や「ポンペイの赤」が大流行したんだよ!
胴が短くなり始めるのがこの頃。
だんだんハイウェストになっていくよ!
それに引き換えヘアスタイルがどんどん大きくなって行くよ!!
ギリシャ古典回帰とか言っておきながら、なぜかすでに十分デカかったボリュームヘアが、さらにカールさせてボリュームアップ!!
革命前最後のお貴族様ファッションのあがき!!!
維持するのがべらぼうにお金のかかるこのヘアスタイルは、市民の敵のシンボルになっちゃうんだけどね。
エンパイアスタイル幕開け、みんな足長に?!1795年~99年
さあ、フランス革命後少し落ち着いたよ!
この時代は優美なギリシャ風がトレンド。
ギリシャのゆったりしたチュニックがモードな気分だったんだよ^^
でも何十枚(うそ)ものお下着をやめていきなり腕丸出しにしたから、
恥ずかしい!!
どころかパリの寒空の下、肺炎で死んでしまう女子激増!!
やめようね、オトナ女子ならそういうこと。
いえいえ、流行を追わないと!モテないと!ケッコンできないのよ~!
さておき、どんどんハイウェストが流行っていくよ~~!!
なんか一気にみんな足が長くなったの?
ひっぱったの?矯正したの?
ちがうちがう、いつものように体型補正下着一択だよ^^
襟ぐりに軽いスカーフを巻くのが流行ったよ!
薄くて丈夫でなが~いフィシューと呼ばれるスカーフね。
ちょっとはあったかい・・無理スンナ~!
それに肩までの長い手袋で、腕丸出しをちょっと抑えたよ^^
アヒルのくちばし色の長手袋が大流行。
ヘアスタイルは大き目ね!
キャップをかぶってさらに大きく見せましょう~
だんだん変な方向に行っちゃって!
巨大なマフまで持つ女子が・・
メルヴェイユーズ(奇抜な人たち)と呼ばれるよ!
1799年に近づくにつれてヘアスタイルは小さくなって行くよ!
袖付けは前方だったよ!
スカートの後ろにボリュームは残したまま。
ネオクラシック時代ってこれさ!1795年~1810年
ネオクラシック時代の中の、特にナポレオンの帝政時代をエンパイアスタイルっていうヨ!
エンペラー=皇帝=ナポレオンだよ。
とにかくモテるためにはスタイルまで変わっちゃうよ!
いつも言ってるけどさ。
今と違って、女性=結婚=永久就職ね。
だから流行にのって金持ちイケメン捕まえないと!!
ここでカノーヴァの彫刻に注目ね!
誰じゃそれって?
新古典主義を代表するイタリアの彫刻家だよ!
うんちくはいいから、この人の作品を見ると当時の体形が3Dで分かるから、超おススメ!
ローマのボルゲーゼ美術館にあるよ。
でも要予約だから気を付けてね!
これがネオクラシックつまり新古典主義のスタイルね。
とにかく1700年代のロココ様式では、
胴長短足、頭は大きく、ヒップも大きく。
1800年前後のネオクラシックでは、
頭は小さく、首は短く、なで肩に。
超ハイウェスト、
胸の付いている位置まで上がっちゃうよ!(どうやって?)
これでギリシャの理想美、黄金比率の9頭身美人を実現!
ヒップはアンダーバストから洋ナシみたいなかたちに・・
人体が柱みたいに真ん中でちょっと膨らんで、まっすぐになっちゃうんだよ。
ちょうどギリシャ建築の柱みたいにね!
シルエットがは大きな襟ぐりとパフスリーブ、超ハイウェストでね!
袖はびっちびちのぴっちぴち。
腕が細く見えるよう超きつくね。
「N-ナポレオンと私」の衣装解体、下のドレス
じゃお待ちかね(前置き超長くてごめんね)、「N-ナポレオンと私」の衣装解体だよ~
このドレスは下に着る方ね。
薄く透けるモスリンで、エンパイアスタイルの大きな特徴がよくわかるよ!
超小さい後身頃は袖山を後ろの方に持ってくるため。
なんでって肩幅を小さく見せるためさ!
後身頃はこのひし形の部分だけね。
そして周りが黄色の細いループで装飾してあるでしょ?
これで小さい後身頃をちょっと目立たせる。
そして何より後身頃をちょっと固くしてたんだよ。
あまりにも薄いモスリンのドレスをちょっと丈夫にと、スタイル維持に。
ガードルやコルセットみたいにね。
ギリシャ人は小さい頭、小さい肩幅、短い首と、上半身がとってもコンパクトだったからね!
これで9頭身美人を実現してたんだから、マネしないと!!
ギリシャの黄金比率を人体で表せた人が美人イケメン!
スソにも注目!
エンパイアスタイルではたった1、2段のひだがシンプルで重要な装飾だったんだよ。
「N-ナポレオンと私」上着のチュニック
お次はチュニックになっている上着のドレスだよ~^^
緑のボレロ部分は全体が重い分厚い生地で固い作りになってるよ。
アンダーバストに縦にボーンが入っていて、バストを支えていました。
コルセットの役割だね!
このボレロはもちろん下のドレスと違う色合いでね。
後身頃はコレも超小さいね。
まんなかに黄色い生地のヒダがたくさん折り込まれていました。
1730年頃流行ったのワトーっていう後ろのトレーンみたいにね。
みんなフランス革命で王侯ファッションを憎んだはずなのに、やっぱり布地を大量に使う豪華なこの流行は使われちゃうね。
ナポレオンの奥さんのジョゼッピーナみたいにね。
チュニックのスソは下のドレスより10センチは短くして、下のドレスをよく見せるのがお約束。
チュニックの袖も開いた作りになってて下のドレスの袖も見せてね!
黒いボレロに白い刺しゅう入りのも流行ってたんだよ。
他にもミリタリー風、ポーランド風、コサック風、毛皮に飾りヒモ付きとかね。
黒、赤、ウールやベルベット・・
エンパイアスタイルのコルセット
エンパイアスタイルのもと、フランス限定のスゴイ話なんだけど。
ギリシャの薄物を着るために、一旦コルセットを外したんです!!
なんたること!!
その他の外国や1815年のナポレオン失脚以降のフランスでは、コルセットしてるけど。
ココ・シャネルとポール・ポワレ登場の1906年までね!
でも簡単に足長ハイウェストに見えるような体型にするためには、何をどうしたらいいんでしょう?
正解は服のアンダーバストの切り替え位置を高くすること。
でも難あり体型でうまくいかない人は~?
やっぱり短いコルセットだね。
バストを上の位置に持ってくる目的のごく短いタイプ。
1700年みたいに細く長く固いウェストラインじゃなくて、
優しい曲線でハイウェストにみせる方。
このコルセット、1830年頃になるとまたヒップラインまで長くなっちゃうんだな~
動きにくい。
そして1840年にウェストラインが元の人間の正しい位置に戻るよ。
シュミーズドレス
もう一つ、映画で使われた緑のシュミーズドレスを解体^^
シュミーズドレスは元々もちろん部屋着。
日常着として中世の終わりごろからすでにあったんだよ^^
エンパイアスタイルではシュミーズドレスの中で胴を絞るために、きつめのベースの胴衣が縫い込まれています。
ちょっと開けて見ちゃいましょう^^
表のシュミーズドレスはアンダーバストでシャーリングさせて結びます。
シュミーズドレスの後身頃のひし形部分はもちろん、なんだっけ?
もちろん、「超小さく」ね!
パフスリーブとデコレーションに注目!
この映画の衣装は本当に良くできている!
エンパイアスタイルの画家、フュッスリ
最後にエンパイアスタイル代表画家の紹介だよ~
ヨハン・ハインリッヒ・フュッスリ!
ヌードの女性の体形に注目!
小さい頭、短い首、短いバスト、洋ナシみたいなアンダーバストからヒップのライン・・
ギリシ9頭身美人そのもの!
ピアノを弾いている女性の背中にも注目。
後身頃が手のひらサイズ!
上の絵の正面向いている子。
ドレスのひだが全部胸のバラの花に集められています。
超ハイウェストの視覚効果バツグン!!
エンパイアドレスの歴史は超短命‥
エンパイアドレス、18世紀末にあっという間に広まったと思ったら
1800年から1815年のまでの短い間しか流行らなかったね。
それでもこの胸のすぐ下で切り替えたハイウェストのおかげで女性たちもやっと動きやすくなったし。
これまでのコルセットやおっもた~いスカートにサヨナラー
このシンプルさは当時の政治や革命後の社会の変化そのもの。
エンパイアドレスはロココ時代の華美で役に立たない窮屈なファッションからの脱却。
ナポレオンの妻ジョセフィーヌ皇后が大のお気に入りでこの流行りの推進者に。
影響力大なファッションリーダージョセフィーヌのおかげでヨーロッパ中にエンパイアドレスが広まったよ。
産業革命からイギリス、フランス、イタリアでも自国で作れるようになったのが綿。
その前までは綿はインドからの輸入品で高級すぎ!
その安くなった綿を使って作るのがこのエンパイアドレス。
そんな経済背景も後押し。
そしてすぐ廃れちゃった理由はあまりにも軽いから。
ジョセフィーヌの夫ナポレオンの権力の終焉とともに
時代はさっさと王政復古に移り
再びもっと重厚な貴族文化のリバイバルになるのよ~
でもこの流行りは時を超えて現代のファッションにも繰り返し出てくるね。
まとめ
映画「N-ナポレオンと私」の衣装を実際に解体してみました~
エンパイアスタイルの注目ポイントは、
- 超小さい後身頃
- 超ハイウェスト
- とても楽なコルセット
- 薄物のモスリン使用
でした。