現代の着物はほとんど量産プリント。
その柄デザインはPhotoshopなどでデザインされたものがほとんど。
今回は実際に手描き友禅の着物デザイナーの私が着物製作の全工程を紹介!
大きな絵を切れ目なく描くことができる着物は着られる芸術品。
そして世界に誇る超実用的な日本のデザインです。
着物の素晴らしさはなんと言っても
- 大きな絵画表現が可能ということ!
- 端切れがでないこと!
- すべて直線断ち
つまり反物の大きさが万人向けに決まっている。
その中で捨てる部分なしで一枚の着物が出来ちゃう。
着物のデザインはというと、パターンは決まっているので図案のほうですね。
パターンは長い年月かけて洗練されたデザインなので変えないほうがいい。
ちなみに着物デザイナーになるために資格はいりません。
目次
実は着物デザインは約束事でがんじがらめ!!
着物とは‥まず平面で大きな絵画として見て美しいデザイン。
しかもまとって立体作品としてなお美しいデザイン。
おまけに着物は体に巻き付けて着る‥
だから見える部分と隠れちゃって見えない部分が!
着物の構成ね↑
- ピンクが着た時によく見える部分
- 青が隠れちゃって見えない部分
着物には上前(うわまえ)と下前(したまえ)ってのがあります。
帯で見えなくなるとこにもデザインを置かないほうが制作の苦労が減るね。
でも着物を広げて平面で見た時に柄がないとデザイン的にヘンだよ~
えりは顔の近くだから当然デザインの重要ポイント。
だから超よく目立つ上前、えりをデザインの中心に。
でもそれだといつも同じような構成になっちゃう‥
それに縫い目に柄がまたがってるとずれた時に興ざめ!
だから縫い目にあまり細かい柄をかけないように‥
それがこの着物デザインのわくわくするところ。
集中しすぎて製作工程の写真は一枚も撮ってないからイラストにするね。
着物製作の実際って超複雑!まずはひな形デザイン
それぞれ違うから私のやり方をご紹介。
京友禅は全工程を熟練の職人がそれぞれ分業。
私は全工程を一人でやる東京友禅。
それぞれの工程が大好きだから一人でやっちゃう。
まずは外に行って植物をスケッチ。
これは土佐みずきっていう私の好きな木。
この房から着想を得て図案化。
これが土佐みずきのデザイン。
ひな形っていう小さいカタチで着物の原案をデザイン。
デザインがカタチになる第一歩、仮絵羽と下絵付け
実際の着物製作スタート!
まずは真っ白い絹反物を選ぶ。
一反の反物からハギレなくムダなく全部のパターンをとるよ~
用尺は大人は全員同じ!
これすごいよね。
着る人の寸法に合わせて生地を裁断、仮縫い。
これが「仮絵羽仕立て」。
仮絵羽した絹にどこに柄が来るかわかった状態で下絵をつけるよ。
縫い目は合口(あいくち)っていいます。
合口は絶対ずれちゃダメ。
下絵は昔は青花で描いてました。
これはツユクサの汁で蒸気あてると色が消える優れもの。
今は合成の青花液を使うよ。
便利なペンタイプまであるけど線の強弱が出ないから私は使いません。
トレース台に紙に描いた原稿と絹を重ねてトレース。
面相筆で描きます。
参考までに、練習は「四君子」で。
キンチョーの糸目糊置き
このばらばらの平面の状態で作業をすすめるよ。
つぎの作業は下絵の上に糸目糊置き。
これで防染するの。
防染って生地に染料が染めつかないようにすること。
この場合糸目を置いたとこは白く色が染まらないで残るよ。
現代ではゴム糊を使います。
だからゴム糊置き。
粘性のある液体ゴムで下絵をなぞる。
筒の中にゴム入れてパティシエみたいにね。
生地の裏から「ベンジン地入れ」しないと色がはみ出してにじむよ~
生地裏からベンジンで糸目部分をすこし溶かす。
そして生地にしっかりくっつけるんだよ。
溶かしすぎると糸目がにじんで線が太く汚くなるよ。
ゴム糊は一度生地に置いちゃうと取れません!
ここで柄を拾い間違えたら修正できないので厳重注意!!
たのし~友禅色挿し
友禅の特徴は色のぼかし。
このぼかしは一つ一つ手で色挿ししないと出ない。
水状の化学染料に「泣き止め」を混ぜてとろ~りとさせて色を挿していきます。
色が糸目の防波堤を越えて地色のほうへはみ出すことを「泣く」っていうヨ。
だから「泣き止め」ってので色をちょっとかたくする。
でも入れすぎるときれいに色がぼけないよ~。
「ふのり」ってもの入れて色をぼかしやすくしよう。
小さいたわしみたいな「ぼかしバケ」で色をぼかして。
これが友禅のぼかしを使った技法↑
白には「ゴフン」を使ってね。
桜の白はゴフンをふんだんに。
ゴフンは貝をつぶした顔料だよ~
この顔料が光を反射させてきれいなんだ。
ふわ~っと模様が浮かび上がるの。
でもやりすぎ禁止!
染料は一度生地についたら取れません!
ここでも取り返しのつかない作業なので緊張!!
間違うな!ロウ伏せ、伏せ糊
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背景色を染めることを「地染め」っていうヨ。
でも地染めの前に友禅で染めた柄を防染しとかないと。
だから友禅で染めた柄にあっつい溶かしたロウを塗ります。
これで防染になって柄に色がかぶらないよ~
これが「ロウ伏せ」。
失敗しにくいベンジンで薄めたワックスですることもあるよ。
ここで要注意!!
地の部分にロウがたれちゃったら‥
完成品で超目立つ‥
だから「たれちゃった~」は厳禁!!
いよいよ大舞台だよ、引き染め
さあ、いよいよ引き染めの大舞台だよ~
ばらばらだった反物を一本に縫い直してたるまないように柱と柱の間に張る。
13メートルの反物が水を含んで伸びるから16メートルのスペースはいるね。
生地がたるむとそこだけ色がたまる。
それが色むらになって後で縫い合わせたとき部分ごとの色の違いが目立つよ~
それでは地染めはじまり~
まず地の色をたっぷり作る。
出来たら2倍に薄める。
2回で染めたほうが染まりつきがいいからね。
2度目の染めで思い通りの色を完成させる。
染めてる途中で手を止めて色を作り足したりすると色むらになるから注意ね。
緊張!
でも「アミラジンさま」って助剤があるからまあ大丈夫。
これは地色に入れて色むらにならないようにちょっとだけ助けてくれる不思議なお方。
次に刷毛で生地に水だけを染めま~す。
13センチくらいの大きな刷毛でね。
これでまあまあ色むら防止。
次に「アミラジンさま」入りの地色を染めていきま~す。
こうすると水ににじんで色むらになりにくいよ。
刷毛のストロークの継ぎ目と継ぎ目の間は等間隔にね。
刷毛が入るときと刷毛を抜くとき色をカスレさせて。
あの手この手で色むら防止。
1回目端まで行ったら、乾かないうちに2回目染める。
これは日本ならではの染色。
イタリアでは乾燥しすぎてて2回目の染めで色がぼけずない!
色がじんわりしみることができない‥
だからイタリアでは染料のお鍋に生地や糸を入れて染める。
この地染めは「靄ぼかし」といって靄のようなぼかしが特徴。
これをできる職人さんは日本でももう数人のみ‥
靄の間隔が一定ですごい技術です。
この時はどうしてもこの染めを取り入れたかったので頼みました。
話は日本に戻って、ここで染めの作業は終了。
乾いたら蒸し洗い工場へ。
ゴージャス金彩加工
蒸し洗い工場では生地についたワックスやロウを洗って落とすよ。
さらに生地を蒸して色止めする。
高温蒸気で染料が絹に定着するの。
これで手もとに反物が返ってくるヨ。
さあ今度はまた絵羽。
反物をまたばらして柄を合わせて着物のカタチに縫い合わせ~
ここがぼんやりするから金を混ぜた糊を置いてアクセントを描いていきます。
これが金彩加工。
金砂子っていう蒔絵みたいに細かくした金箔をまく技法もあるよ。
上の着物には金砂子をふんだんに。
手の汗で金箔が手に張り付いてくっちゃくちゃになるから触らない!
金箔は竹ばさみではさんでね。
で、やっと完成!!
お仕立てゴール
晴れてお客様に買ってもらえたら‥
ここまで来たらやっとお仕立てざます。
着物の本縫いをします。
着たいときには着ちゃってもよし。
ぺったんこにたためるから旅行にももって行きやすい。
超薄型でしまう時場所とらない!
着付けがわかんなかったら羽織っちゃえ~
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まとめ
もう消えつつある手描き友禅の技法でした~
着物製作とは
- たった一枚に20以上の工程がある
- 一度染めたら取り返しがつかない
- 誰でも同じサイズのたった一本の反物から作られる
守るべき日本の染みる心‥