もし華やかなルネッサンス映画衣装担当になってドレスをデザインするとしたら?
まずは詳細な資料集めからスタートしよう。
パリに今すぐ再現できるくらいに鮮明なモノが現存してる。
虫メガネをわすれずにね。
目次
『聴覚』はルネッサンスで大流行した生地を使用!
クリュニー中世美術館には『貴婦人と一角獣』の6枚連作のタペストリーがある。
1485年から1500年、ルネッサンス後期に織られたとされてる。
それは生地中に織られた生地。
なんとタペストリーという生地の中にルネッサンス当時の生地が織りこまれてる!
中の一枚『聴覚』がテーマのタペストリーに近づいてみよう。
なるほど貴婦人と侍女が弦楽器をひいています。
さらに貴婦人のドレスの生地にちかづいてみると‥
特徴は超大きい花のモチーフ使い。
この頃は建物が大きくて天井が高かったから人と人との距離遠い。
ソーシャルディスタンス保った感じ。
だから柄も大きくしないと謁見なんかで見えないヨ。
ロココになると小さくて親密な感じの小部屋が流行った。
だから大きな宮殿の中にわざわざ小部屋作って壁紙貼ってこまごまインテリア飾って‥
人との距離も近かった。
だからちかくで見てカワイイ小花模様や細いストライプなんかが流行ったんだよ。
貴婦人のドレスの柄までルネッサンスの香り満載!
貴婦人のドレスの生地に戻って。
大柄のモチーフの中に細かいモチーフを入れるのはいつでも大人気。
正解はざくろ。
ザクロはまず、教会のシンボル。
ざくろのたった一枚のかわの中にたくさんの種子があつまる‥
教会は唯一の信仰にたくさんの人間を結びつける‥。
ってことをあらわしてるとされる。
ところで古代からザクロは女性の子宮をあらわしていて種子は多産の象徴‥っていうのもある。
とくにルネッサンスイタリアでこのざくろ柄の生地が使われてるの多いよ!
ほらね、15世紀末の法衣ヨ。
ちなみにゴシックまではドラゴンやライオンなど、どうぶつ柄が人気。
ところでルネッサンスはみんなが中世教会の権威から脱したとき。
ちがうんじゃない?
ここで表されているのはギリシャ・ローマ文化由来のザクロの意味‥?
ざくろはヘラとアフロディーテの象徴。
『生命をうみ出す女神の奇跡‥』
ルネッサンスつまり『再生』、のざくろが意味するところはこっちじゃない?
つまり女性賛美の柄が使われてるドレスってことにならない?
ルネッサンス超有名画家ピサネッロだってテキスタイルデザインもやってる。
ここでも大きなモチーフの中が小さなモチーフで埋め尽くされてる!
この生地は緞子(どんす)で赤い部分がとびだしててベルベット。
金色の地がつるつるとへこんでる。
裏から見ると凹凸が逆になる。
タペストリーの中のドレスにも生地艶まで織り込まれてるよ。
ルネッサンス時代の裕福な夫婦が金細工を買う場面。
ほら、ここにもあるザクロ模様。
びっくり!スソまで凝りに凝ってる
表のドレスに穴があいてて下の生地の模様か刺繍が見えてる。
ルネッサンスのおしゃれセッターは下から別アイテムをチラ見せするのが大好きだった!
どうやら生地はし部分2重の袋状になってるよね?
その下の蒼い生地にはお花かまるいモチーフ。
そのまわりをさらに真珠で飾ってある!
ルネッサンスおハゲ美人ここにも!
あたまに納豆をつつむワラを巻いてるような‥
そしてちょんまげ。
そしてもちろんおしゃれの決め手はおハゲと薄い眉。
実はこれ全部わざとヨ。
このヘアメイクが流行ったんだから当然やるでしょ。
たとえ髪を抜いても剃ってもね。
三つ編みは凝ったカタチがこれでもかってくらい流行った。
ほら、巨匠ダビンチだって三つ編み描いてる。
現代テキスタイルデザインで再現する方法と生かし方
おまけね。
私はイタリアのテキスタイルデザイン事務所でもはたらいています。
そこでは今でもこんな柄の生地をつくることがあります。
イタリアのインテリア業界では需要が超多いから‥
イタリアのデザイン事務所で働くことについてはココ↓
あ、コロナの心配がないときね。
ところで。
我々はデザイン見本を作って織物業者に売ります。
デザイン画をきめたら、生地の凹部分の生地を用意。
ここでは赤ね。
生地の裏に両面テープを貼ってザクロ模様のカタチに沿って切り抜く‥
その他小さいモチーフも全部ね。
凸部分はベースの生地の色、つまり黄色を使います。
先ほどの切れた赤いモチーフを黄色生地の上に貼っていきます。
ペタペタ‥完成!
あとは買った人が織る。
じみ~でしょ?
でも織るよりは早いのでこの方法で実物見本作ってます。
劇場やオペラの衣装にも使う方法だよ!
私はこの事務所で学んだたくさんの生地見本の作り方を生かしてステップアップしました。
これが次に映画衣装業界に行った時すっごく役に立った。
今はもうない時代の生地を再現できたから‥
そんなことがスムーズにキャリアを積むきっかけになりました。
ジャガード織のモワレもゴージャスで大流行!
このタペストリーのテーマは『視覚』。
まずは貴婦人のドレスに注目!
ほら、生地の模様までみえるでしょ!
コチラはざくろのようなアカンサス文様のような‥
アンダースカートはモワレ生地。
モワレはこんな風に木目柄のある生地だよ~
装飾なしでもゴージャスにみえるから大流行りしたんだよ。
このタペストリーは『嗅覚』。
ここにもザクロ模様の生地。
でも一番目の聴覚とちがってこれがアンダースカートになってる。
上のドレスは艶のある青い生地で裏が赤いモワレ。
聖母マリアの衣のシンボルになる表が青、裏が赤色使いと同じ。
だけどそこまでの意味があるのかは不明。
侍女のおしゃれなボタン使いにも注目!
『貴婦人と一角獣』のミステリーに隠された『笑い』?
このタペストリーの6枚目のテーマは長年ナゾとされてる。
『我が唯一の望み』ってテーマでまだ謎に包まれている。
はやく解明して!
ところで初めの『視覚』に戻って。
ここに笑いが隠されてるよ!
清楚な貴婦人がいきなりマジメな顔で納豆の包みワラちょんまげヘア見せてない?
一角獣はふきだす寸前。
自分、鏡でみせられて詰めよられてぷぷぷ~、みたいな。
反対側にいるライオンなんて笑いこらえてそっぽ向いてる‥
うさぎちゃんだってお口おさえてがんばってるよ!
このタペストリーはお堅い宮廷をやわらかくする道具だったのかしら?
ルネッサンス時代はヘアスタイルにファンタジーを求めた時代。
だからありとあらゆる創造がなされたけど‥
それにしてもこのタペストリーの連作のヘアスタイルはおもしろすぎる!
ほらね
おハゲつのつの一本ヘア。
どんよりとしたパリの薄暗いクリュニー中世美術館で‥
突然浮かび上がるルネッサンスの華やかなタペストリー。
昔、絵は読むものだった
19世紀までの絵画にはよくイコノロジーがつかわれてます。
写真がない時代だったから絵でお話を表す。
それぞれのシンボルのもつ象徴をいかして画面構成するの。
ボッティチェリの絵もシンボルであふれてます。
ダン・ブラウン氏の小説『オリジン』や『ダ・ビンチ・コード』でラングドン教授がよく読み解いてるでしょ?
画家の感情とか描きたいものを描くようになってからこの手法は取られなくなっていくけど。
聖人サンピエトロは天国のカギと一緒に描かれてる。
彼が天国の門の番人でカギをあずかってるから。
サンジョバン二は荒野で毛皮を着てイナゴをたべて生きてた。
だから毛皮とともに描かれてる。
このタペストリーがわたしをローマにつれていった
初めてこのタペストリーをみて豪華さと古さに圧倒された。
それに美術館であるこのもと修道院は14世紀創立。
タペストリーよりふるい!
内部は設立当時から現存してる‥
びっくりすることに、さらにその下に1から3世紀のローマ浴場跡がある!!??
それって遺跡が何層にも重なって現代につながってるってこと?
わたしが初めてローマ浴場跡をみたのは小さいとき住んでた東ベルリンで。
その上にも15世紀の歴史的な広場と建物がありました。
ローマ軍がその昔ここまできたんだよ~
っといわれてもピンとこなかったけど。
ここでまたローマ遺跡?って思いました。
それからいつも下敷きになってるローマ遺跡自体をみてやろう!っておもいはじめて‥
1年後ローマまで行きましたとも!
すべての文化のベースを見たおもいでした。
そこからローマでデザイナーになることまでできました。
16世紀ヨーロッパの服装、超重要な変遷
16世紀のファッションについてちょっと。
この時代文化の中心がイタリアからスペインに移っちゃうの。
15世紀までに花開いた最先端ドレスから16世紀初頭ではまだまだイタリアがファッションの中心。
イタリアの服装がファッションリーダー!
でも1527年ローマ劫略というヨーロッパを震撼させる事件が。
神聖ローマ皇帝カール5世が傭兵部隊でローマ法王を攻めてローマを攻撃。
皇帝側は勝利の後指揮官は死亡。
野放しで統制の取れなくなった傭兵がローマ市街を焼き尽くし、
市民を皆殺し、強奪したの。
ここから元はブイブイ言わせてたローマと
イタリア全土の経済が大きく崩れて
ファッションリーダーの地位から降板。
イタリアルネッサンスが終焉を迎える準備が始まる。
次世代ファッションリーダーはカトリック政策で大成功するスペインと植民地支配が成功するイギリスへ・・
ファッションは強い経済圏の国が勝ち、
まねされるのよ~
まとめ
貴婦人と一角獣にまつわるテキスタイルデザインのお話でした~
- どんなテキスタイルが使われたか
- タペストリーにまつわるミステリーに隠された笑いについて
みてみました!
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